耳慣れない言葉ですが、恩赦(おんしゃ)って言葉を知っていますか?
感謝は誰もが知っていると思いますが、似た感じのする恩赦って知らない方が多いですよね。
恩赦とは、行政権によって裁判で決まった刑罰の全部又は一部を特別な恩典によって消滅又は軽減させる制度のことです。
なぜか、そんな恩赦に興味津々になってしまったので、調べて紹介することにしました。
○恩赦とは?!
恩赦は「恩赦法(昭和22年施行)」により、種類や効力などが定められています。
恩赦には、大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権の五種類があります。
大赦…恩赦のうちで最も強い効力をもち、政令で定めた罪について、有罪の判決を受けたものに対しては判決の効力を失わせ、まだ有罪の判決を受けてないものに対しては公訴権を消滅させるものです。
特赦…有罪の判決を受けた特定の人に対して、判決の効力を失わせるものです。
減刑…有罪の判決を受けたものに対して、刑を減軽して、刑の執行を減軽するものです。なので刑の減軽だけでなく、執行猶予期間の短縮などもあります。
刑の執行の免除…刑の言渡を受けた特定の人に対して行いますが、執行猶予の短縮はされません。有罪判決の効力に影響するものではなく、また前科も抹消されません。
復権…有罪の言い渡しによって喪失し、または停止された資格を回復させること。ただし、刑の執行が終らない又は執行が免除されていない人は対象となりません。つまり、復権は罪を償ってからとなります。
このような恩赦ですが、どんな時に恩赦があるのでしょうか?
○どんな時に、恩赦があるの?
恩赦には、政令恩赦(政令により、罪や刑の種類等を定め、該当するものに対して一律に行われるもの)と個別恩赦(特定の者に対して個別的に審査をした上で行われるもの)の二種類があります。
恩赦は、なんと戦後12回実施されています。そして、政令恩赦は、天皇陛下、皇室の慶賀行事があった場合に実施されることが多いようです。
・戦後実施された政令恩赦
昭和20年10月17日 第二次大戦終局
昭和21年11月03日 日本国憲法公布
昭和22年11月03日 昭和20年10月17日及び昭和21年11月3日公布の減刑令の修正
昭和27年04月28日 平和条約発効
昭和27年11月10日 皇太子殿下(明仁親王)立太子礼
昭和31年12月19日 国際連合加盟
昭和34年4月10日:皇太子殿下(明仁親王)御結婚
昭和43年11月1日:明治百年記念
昭和47年5月15日:沖縄本土復帰
平成元年2月24日:昭和天皇御大喪
平成2年11月12日:今上天皇御即位
平成5年6月9日:皇太子殿下(徳仁親王)御結婚
知らなかった人も多いと思いますが、こんなにも恩赦が実施されていたのですね。
でも、なぜ恩赦が実施されるのか?と疑問に思う方も多いと思います。
○なんのために恩赦があるの?
刑罰って何かの罪を犯したから、課せられているのですよね。
だから、基本、罪を犯した方の刑が軽減されるのは問題なのでは?
強盗殺人等の凶悪犯罪者の刑罰が軽減されるとしたら、問題だと思う方もいると思いますし、疑問ですよね。
現実的には死刑囚が恩赦により減刑されることはほぼありません。
しかし、ここで確定ではなく、ほぼとしたのは、実際に死刑囚が恩赦により減刑された事例があるからです。
かつての日本の刑法典には尊属殺に関する規定があり、法定刑が死刑または無期懲役に限定されていたところ、最高裁判所により違憲であるされました(尊属殺法定刑違憲事件)。
しかし、この違憲判決より前から尊属殺で受刑していた者については司法的な救済はできないことから、恩赦が行われたのです。
有罪判決が出た当時の社会状況では妥当な判決でも、受刑中の社会の変化により刑の妥当性が失われる場合がありうるのです。
このように、社会の変化や事情変更に対応するために恩赦は必要場合もあるのですね。
近代において一般の死刑囚が恩赦により減刑されたことはありません。
また、誤判の救済手段のための恩赦もあります。
冤罪だったことや誤審だったことがわかった場合、一度有罪判決が確定した後の再審は、法的安定性の見地から上訴と比較して厳格な要件が求められます。
その厳格性ゆえに法律で定められた再審手続では救済できない事案も存在するのです。そのような場合に恩赦による救済が考えられます。
そして、受刑者の事後の行状に基づく恩赦があります。
犯罪者の社会復帰を目的とするものです。まじめに更生しようとしている受刑者に対し、長い拘留生活が逆効果になることがあるため、そうした状態を是正する手段として使われます。
また、恩赦は、君主制国家で君主が慈悲を垂れるという習慣から発したものなので、定かではありませんが国家の示威行為というところもあるようです。
このように、恩赦により救済される場合がありますが、恩恵をうけるのは、凶悪犯罪者ではなく、政治犯や経済犯などの軽い罪が中心です。
昭和天皇が崩御された際に死刑判決に対して上訴していた犯罪者が、恩赦を期待して上訴を取り下げ、刑を確定させた事があります。
何故なら確定囚にしか恩赦は適用されないからです。
しかし、思惑はものの見事に外れ、恩赦は行われず死刑執行を早めただけに終わりました。
だから、基本、恩赦があったとしても、凶悪な犯罪を犯した受刑者の罪が軽くなることはないようです。
恩赦があるからといって、犯罪に手を染めてはダメですよ。