皆さんは、ADHD(注意欠陥多動性障害)といって、脳の機能不全が原因なのではないかと考えられている障害をご存じでしょうか?
ADHDは、最近よく耳にするようになり、その特性についても認知されつつありますが、少し前までは、小さな子どもであれば、落ち着きがない子、乱暴者、親のしつけが出来ていない子など、大人であれば、そそっかしくミスが多い人、約束が守れない人、変わり者などと周囲から誤解される場合が多くあったようです。
そして、ADHDを知らずに社会生活において不自由を感じながら、悩み、苦しんできた人も多くいるようです。
最近では、ADHDについて少しずつ認知はされつつあるものの、世間の理解はまだまだ深まったといえない状況に思えます。
そんなADHDに悩んでいる人のためにもADHDのことを少しでも理解してみてはいかがでしょう。
〇ADHDの割合
どれぐらいの方がADHDなのかを知っていますか?
全国実態調査では、2.5%程度の子供がADHDではないかと言われています。
だから学校のクラスに40人程度いれば、一人はADHDの子供がいるという計算になります。
特別な障害ではなく、それぐらい多くの子がADHDなのです。
ADHDは大人になるにつれて、症状が改善する傾向がありますが、大人でも1.5%程度の方がADHDだと言われているのです。
そして、男女によってもADHDの割合が違い、男性の方が女性の4倍程度多いと言われています。
だから、日本の人口で考えると数百万人以上の方がADHDだということになるのです。
〇ADHDの特徴
ADHD の主な症状は、
①注意力の欠如、気が散りやすい「不注意」
②落ち着きがなく、じっとしていられない「多動性」
③結果を考えずに行動してしまう「衝動性」の3つに分類されます。
では、子どもにみられる症状と大人にみられる症状にはどのようなものがあるのでしょうか?
子どもにみられる症状としては、じっと座っていることが難しく、授業中立ち歩いたり、どこかに行ったりする。順番が守れず、割り込みをする。宿題や忘れ物が多いなど学校生活において支障をきたすような行動が見受けられます。
大人にみられる症状としては、その場にふさわしくないことでも思った言葉をすぐに発してしまう。時間の管理ができない。仕事や作業を順序だて効率よく行うことができない。ケアレスミスが多いなど職場や人間関係での困りごとが多く見受けられます。
また、ADHDの人は、注意の対象が移りやすく、気が散りやすいという特徴があります。そのせいで、物の置き場を間違えたり、忘れてしまったり、身の周りの整理整頓がうまくできないことがあります。
→ 整理整頓できないのは自分がダメだから?もしかして病気が原因かも?
〇もしかしてADHDかも?
お困りの症状があるからといって、ADHDであるとは限りませんが、気になる症状があれば早めに専門医を受診することをお勧めします。
ADHDは早期に発見し、早期トレーニングすることで改善や対策をたてることができます。
また、ADHDと気づかずに親も悩み、子どもに手を上げてしまうなど虐待の危険性もあり、子どもにも精神障害や人格障害になる可能性が高くなります。
親子関係を良好に保つためにも、気がかりがあれば一人で悩むのではなく、一度診察を受けてみてはいかがでしょう。
〇ADHDとうまくつきあうために・・・
ADHDの人は、自分自身の感情や行動を上手くコントロールすることが難しいようです。
そのために、社会適応が難しかったり、人間関係に支障をきたしたり、また、不適応に悩み、うつや不安障害になる場合があります。
しかし、自分の特性を理解し、得意・不得意を見極めることと、周りの人の理解やサポートで改善することも可能なのではないでしょうか?
また、ADHDの人がすべて、社会適応ができていないわけではありません。
ADHDの特性をマイナスの要素として捉えるのではなく、強みだと思うことで未来が広がるのです。
事実、自らADHDであることを告白している有名人がいます。
映画俳優のウィル・スミスさんや水泳金メダリストのマイケル・フェルプスさん、日本では、特に若い世代に人気のバンド「SEKAI NO OWARI」のボーカル深瀬さんなどです。
アップル・コンピュータの創業者で2011年に亡くなったスティーブ・ジョブズさんや、発明家のトーマス・エジソン、日本人の好きな偉人 坂本竜馬もADHDだったのではないかといわれています。
このようにADHDの人の中には、大きな可能性を秘めた人も多くいるのです。
だから、ADHDは障害という言葉を使われますが、障害ではなく特性(個性)としてとらえた方がいいのではないかと思います。
〇ADHDを逆転の発想で考えると(ポジティブシンキング)
ADHDの特徴は、「不注意」「多動性」「衝動性」といったマイナス言葉で表現をされることが多いようです。
しかしこれらをプラス思考に考えてみると、
①不注意→色々なことに興味を向けられる
②多動性→行動力がある
③衝動性→チャレンジ精神が旺盛といったすごい長所にみえてきませんか?
短所を長所として伸ばすことで、ADHDには多くの可能性があるということなのです。
ADHDだからこそという秀でた才能により、凡人ではなく天才になる可能性を秘めているのです。
〇身近な人ができるサポート(配慮)
短所を責めるのではなく、長所を認め評価し、失敗をしたときも強く責め過ぎないことが大切です。
どうしても苦手なことは理解し、強要をしないで、自分のできる範囲で努力をさせる。
抽象的な言葉は避け、行動化しやすい言葉で小分けに説明してあげるなど、少しの思いやりでADHDの方の能力を上手く引き出してあげることができるのです。
そして、感謝の言葉や出来たことに対しては褒めることも忘れずに。
ADHDは、個性です。身近な人が個性を生かすサポートをしてあげれば、多くの可能性を潰さずに伸ばすことができますよ。
〇最後に・・・
ADHDは、脳の機能不全が原因ではないかと考えられている個性であり、「本人の怠慢」や「親のしつけや育てられ方が悪い」といった原因によるものではないのです。
もし周りにADHDの人やその傾向のある人がいれば、理解と少しのサポートをお願いします。
子どもの頃から、社会に上手く適応できず、理解を得ることもできず、悩み苦しみ、またはADHDであることも気づいていない人もいます。
また、ADHDの人の中には、周囲にカミングアウトもできないまま、今もなお苦しんでいる人もいるのではないでしょうか。
多くの人にADHDという個性について知っていただき“認知”が広がること、更に、ADHDの特性についての理解が進み、社会生活において良好な人間関係が築けるようになれば、多くの人が幸せに暮らせるのではないでしょうか。