テレビなどで見たことがある方もいると思いますが、宇宙船や隕石が宇宙から大気圏に突入すると高温になることを知っていますか?
ちなみに、大気圏は、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏に分けられており、人間が通常暮らしている場所は、対流圏になります。
知らない方もいるかもしれませんが、地球に隕石が落ちてくるときや宇宙船が地球に帰還するとき行われる大気圏突入は非常に高温になります。
ちなみに、宇宙船の場合は、一度、大気圏からでてから、もう一度入ってくるので大気圏再突入とも言われています。
そして、大気圏に突入することは宇宙飛行で最も危険性が高い局面の一つでもあります。
皆さんは、大気圏に突入するときに、なぜ高温になるか知っていますか?
私の場合は、大気圏に突入すると空気との摩擦熱で高温になると思っていましたが、私と同じように摩擦熱で高温になると思っている人もいるのではないでしょうか?
その摩擦熱という答えは違うのです。
では、なぜ、大気圏に突入すると高温になるのでしょう。
○大気圏突入時の摩擦熱は無視できるレベル
大気圏突入をすると、物体と空気が擦れて摩擦熱が発生することが知られています。
物体と空気が擦れて、摩擦熱が発生すること自体は間違っていないのですが、ほとんど無視できるレベルの熱しか発生していないのです。
つまり、大気圏突入の際に高温になるのは、空気と物体の摩擦が起こっているからではないのですね。
ちなみに、私も、小学生ぐらいまでは、勝手なイメージで摩擦熱によって、隕石は燃え尽きると思っていました。
なぜ、大気圏に突入すると、宇宙船や隕石が高温になってしまうのかというと、摩擦熱ではなく、空気が圧縮されるからなのです。
○大気圏で空気が圧縮されて高温になる!
宇宙に存在している物体は、非常に高速で地球の周りを飛んでおり、国際宇宙ステーションは、地球1周を約90分の速度で飛んでいます。
ちなみに、東京 ― 大阪間で表すと、直線距離で約50秒で移動するのと同じ速さで国際宇宙ステーションは地球の周りを飛んでいることになります。
だから、宇宙では驚くほどの速さで飛んでいるのですね。
そして、宇宙船も非常に速い速度で地球の周りを飛んでおり、大気圏には、凄いスピードで突入することになります。
だから、大気圏に突入するには、宇宙船や隕石の前方にある空気は、かなり圧縮されることになります。
そして、空気は圧縮されることで、エネルギーが一点に集中することで温度が上昇するのです。
だから、大気圏に突入するときに温度が高くなるのですね。
また、空気が圧縮されることで温度が上昇することを、断熱圧縮と言います。
そのため、宇宙船が大気圏に突入するときには、できるだけ空気を圧縮しないように角度や、速度を考えて突入することになります。
また、一家に一台あるとだろうと思われるエアコンは断熱圧縮を利用した家電になります。
寒い冬に温かい空気を送る時には、空気を圧縮して温めた空気を室内に送っているのです。
夏は逆に空気を膨張されることで、空気のエネルギー量を減少させて温度を下げています。
ちなみに、空気の膨張によって温度を下がることを、断熱膨張と言います。
そんな大気圏に突入するときに温度が高くなる現象である断熱圧縮は役立っているのです。
○断熱圧縮は衛星の焼却処理に利用されている?!
断熱圧縮は、役割を終えた衛星を焼却処理するために利用されており、役目を終えた衛星は地球に落とされ、大気圏に突入することで燃えつきます。
中には、制御不能になって一部の破片が燃えつきずに、地球に戻ってくることがありますが、基本的にすべて燃えるか海に落としてしまうことになります。
壊れた衛星が、そのまま落ちてこないことを考えると、大気圏があることで助かっているのかもしれません。
そして、多くの隕石も断熱圧縮によって燃やされることで、地球に落ちてこないのです。
だから、大気圏があり断熱圧縮によって、地球が守られているということでもあるのです。
そして、断熱圧縮は大気圏だけで起こる現象ではないのです。
○飛行機も早く飛ばそうとすると断熱圧縮が起きる!?
断熱圧縮は大気圏に突入するときだけなく、飛行機を飛ばすときにも発生するため、マッハ3付近の速度の飛行機を開発するのが難しくなっています。
飛行機を制作するときに使用される、アルミニウム合金では、マッハ3に耐えることができず、熱すぎて壊れてしまします。
ちなみに、チタン合金を利用すれば、マッハ3を超えても大丈夫なのですが、お金がかかりますので、実際はマッハ3以下の飛行機しか制作しないようです。
空気を圧縮されることで起こせる物なので、大気圏突入以外でも空気を圧縮してしまうと、高温になるのですね。
大気圏に突入すると、高温になる理由がわかったでしょうか?
意外にも多くの人が勘違いしている大気圏で高温になるのと、摩擦は、ほとんど無関係だったのです!